■夏目漱石著『絵本 草枕』(自主制作・透明水彩画)
“智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。”
有名な冒頭で始まる夏目漱石の名作「草枕」。
この冒頭を知っていても、草枕をちゃんと読んだ人は意外に少ないようです。またビジュアル化された例もほとんどありません。
ストーリーがあるようでなく、とらえどころの無い逸品。
夏目漱石生誕150年を記念して、朝日新聞社運営のクラウドファンディングで資金集めをして制作された絵本です。漱石のご遺族の許可もいただいております。(一般販売では無く支援者への配本)
発起人の小須田祐二氏は、このほとんどビジュアル化されたことのない草枕をどうしても絵本にしたいという思いが強く、イラスト化をご相談いただきました。
通常アナログイラストは、掲載サイズの原寸~1.2倍くらいの大きさで描くのですが、このときはふた回り小さいサイズで描きました。
ざっくり描いた原画を拡大することでよりラフなタッチと柔らかい感じが出ると見込んでの提案でした。なかなか良い感じにできあがったと好評です。
・智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。維持を通せば窮屈だ。とかくに、人の世は住みにくい。《透明水彩》(10.5cm×20cm)
・ここらに休むところは無いかね? もう十五丁行くと茶屋がありますよ。大分濡れたね。《透明水彩》(10.5cm×31cm)
・しばらくすると、煤けた障子が開き、婆さんが出てくる。 これは一向に存じませんで…《透明水彩》(10cm×20.5cm)
・源さん、わたしゃ、お嫁入りの時の姿が、まだ目の前にちらついている。裾模様の振袖に、高島田で、馬に乗って…《透明水彩》(11cm×19cm)
・ほお、そうかい。では、そろそろ、その那古井へ行くことにするよ。《透明水彩》(10cm×19cm)
・あきづけば おばなが上に 置く露の けぬべくも わは おもほゆるかも《透明水彩》(11cm×19cm)
・翌朝、風呂に入り部屋に戻ると、片付いた部屋の箪笥の扉がほんの少し開いていた。《透明水彩》(10cm×18cm)
・また寝ていらっしゃるか、夕べはご迷惑でござんしたろう。何度もお邪魔をして、ほほほ《透明水彩》(11cm×19cm)
・今日は久し振りで、うちへお客が見えたから、お茶をさし上げようと思ってな、和尚《透明水彩》(11cm×19cm)
・すると、こらえかねたように、空から雨が、ざーっと降り、私と那美さんの間に、静かに幕を下ろした。《透明水彩》(10cm×19cm)
・やがて、三味線の音が途絶える。しばらくすると、突然風呂場の戸がさらりと開いた。《透明水彩》(10.5cm×18cm)
・「いい月じゃな」と、和尚は立ち上がると、障子を開け放つ。《透明水彩》(11cm×19cm)
・すると、不人情な惚れ方をするのが画工なんですね。不人情じゃ有りません。非人情な惚れ方をするんです。《透明水彩》(10.5cm×18cm)
・那美さんは、膝を崩して、私の机に寄りかかる。一羽の雉子が、藪の中から飛び立つ。《透明水彩》(10cm×19cm)
・そそり立つ、崖の頂きを見上げると、そこには何と、本物の那美さんが立っている。《透明水彩》(9.5cm×18cm)
・そろそろ、この宿にも、この村にも別れを告げようと思った。《透明水彩》(10cm×19.5cm)
・二人は、何かを話あっている様子だが、こちらには声は聞こえない。《透明水彩》(10cm×19cm)
・ええ、ちょっと頼まれものがあります。父からの餞別で、久一さんに短刀を届けるのです《透明水彩》(10.5cm×19.5cm)
・舟は面白いほど、やすらかに流れる。左右の岸には土筆が生えている。どこからか、機を織る音と、女の唄声が聞こえてくる。《透明水彩》(10cm×19cm)
・私たちは舟を降りて、停車場へ向かう。停車場は、多くの人たちで賑わっている。《透明水彩》(10.5cm×20cm)
・その茫然のうちに、不思議にも、今までかつて見た事のない「憐れ」が、那美さんの顔一面に浮いていた。《透明水彩》(10.5cm×19cm)
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