先日、友人とのメールで、日本人の趣味のあり方について語った。趣味にしてもスポーツにしても、何かのため、という動機が強すぎるのではないかと。
 スポーツがわかりやすいけど、たいがいは健康のためだったりする。学生時代だったら、純粋にその競技がやりたいからだったりするだろうし、異性にモテたいから、なんてかわいい動機だってある。
 でも、大人以上だと、○○のため。趣味だと、趣味くらい持っておかないと、とか情操を身につけるため、なんてこともある。

 絵を描きたいという人でも、あくまで趣味で描きたい。趣味という意識ではなくても、とにかく描いてみたい、と言う人は多い。でも、どこかしら、がんじがらめになっている。うちで絵の教室を主宰しているが、そこでは本人がやりたいことをやってもらう。
 やりたいことがあるけど、方法が分からなければ、適切な手助けをします。たかが絵なんである。誰に遠慮などすることなく、好きなようにやればいいのだ。

 言うのは簡単だけど、いままでやりたくて出来なかった人には、結構むずかしい。好きなことをやっていい、という社会ではなかったし、好きなことをやるというのは、経済的に余裕があって、あくせく働かなくていい人のやることである、という認識も一般にはあったでしょう。また、やりたいことをやるというのは、一種の堕落した生き方である、という見方だって多少されていたりした。
 いまでは、周りも僕の活動を認めているようだけど、すべての仕事を辞めて、絵の方面に突入したときは、ただの「ふらふらした生き方」としか見られていなかったと思う。(事実、そのように言う人は何人もいた)
 好きなことをやって生きていけるなんて思っているのは、世の中を甘く見ているやつの事だったりしたのだ。世の中が甘いか辛いかは、本人の意識次第だと思うのだが。(えらく話がそれてるぞ^^;;)

 で、繰り返すが、たかが絵なのである。確かに本当の意味で「芸術」と呼ぶに値する絵もあるが、何の気無しに描く、遊びの絵だってある。意味のない落書きだってある。職業絵描きになろうとするのなら、それなりの意識が必要だろうけど、好きで描きたいのに、あれこれ縛る必要なんてどうしてあるんだ?
 話が繰り返してしまうが、教室に来た人に自由にやってもらっていても、その人が何かをやるときに、そのやり対して「許可」を求める人は多い。「こういう描き方をしていいのか?」「こういうものを描いてもいいのか?」という類である。本人を責めるつもりはない。その人も犠牲者なのだ。絵を描いて楽しむと言うことを、こんなにも難しいモノにされてしまった犠牲者なのだ。小学校の頃に、自分の絵を先生にけなされて、それ以来自信を失ったという人もいた。

 描きたい絵を実現するために、その人がやろうとしている方法が適切なのか?という聞き方ならもっともな疑問だし、それなりにアドバイスも出来る。でも、絵は芸術なのだから、描いてもいいものといけないモノ、そしてすべての画材は決められた扱い方がある、という意識が働いているのだろう。
 幸いなことに、教室に参加している人たちで、自分が好きで描く絵で、誰に迷惑をかけるわけでも無し、自分がやりたいことを楽しめばいいぢゃん、と思って描いている人もたくさんいる。そういう人たちも、最初はやはり、絵なんて自分にはとても無理なんじゃないか?と思っていたのである。

 海外の事情はほとんど知らないが、少なくとも日本では、絵を崇高な芸術にしてありがたがり、作家を「先生」と呼んでありがたがる風潮はいまでもある。絵そのものよりも、作家の名声やうわべの業績がものを言ってしまう世界でもある。「権威」=「権力」にもなってしまっているだろう。
 ちょっと絵を描いていると言うだけで、「芸術をやっている」という尊敬のまなざしをおくられてしまったりする。正直、自分はそういう見方をされるのは寂しいことである。本当に特別に、自分に特化した事に対して、そういうまなざしをおくられるのならば、それはそれで嬉しいが。

 絵を指導する場合、ほめるに限るというのが常套なんではないだろうか?たしかに、自分が主催する教室でも、ほめるしかない。これは、ほめることで自信を持たせようなんて、そんな意識からではない(まぁ、全く無いとは言わないけど)。けなすという必要がまず無いからなのだ。
 いや、確かに下手な人だって多い。あくまで描写が下手なのだが、そういうモノでも、自分はその人の絵にかなわないな、と思う部分はたくさんあるのだ。
 好みの問題で、自分の好みでない絵もある。でもそれと、いい絵である、というのは全く別である。好みではないけど、これはすごいいい絵だなぁ、というのも教室では時々見かける。参加者の方法を自分が取り入れて、自分の絵の中に使うと言うことだって少なくない。

 多少でも指導やアドバイスを出来る側が「○○を描くな」「○○なんてことするな」なんて事を言うのも信じられない言動だと思う。やるかやらないかは本人の自由で勝手なのである。人の命に関わる仕事を教えているわけではない。
 100%教えを請うつもりで教わっていたとしても、指導する側は、教わる人が能力を適切に発揮出来るように手伝うのが本道であるはず。決して教わる人間を、自分の気の済むように型にはめていいわけがない。相手は奴隷ではないのだ。

 くどくどと横道縦道にそれてしまった。^^;;とにかく言いたいのは、楽しみで絵を描くと言うことを、必要以上に難しく考える必要はないのだ。
 普通は誰も描かないようなモノを絵にするのを、たいていの人は躊躇するけど、本人が描きたかったら描けばいいのだし、他の人がやらないことをやるなんて楽しくてすごいことでしょう。

 楽しく感じないのに、絵をたしなんだ方がいい、と考える人もいる。でも、義務でもないのに楽しくなかったら、なんで続ける必要があるだろうか?もっと別の楽しいことを見つければいいのです。

 と、これ以上書くと、前述の繰り返しになってしまうと思うので、この辺で。お呼びでない?^^;;