今回は源氏物語を紹介します。
世界最古(しかも飛び抜けて古い)の小説で、完成度も小説の最高峰という評価というのが読んでみてわかりました。
源氏物語を読もうと思ったらどの現代語訳を選ぶか?ということになりますね。
もちろん、ダイジェスト本もあります。

自分は最初、円地文子訳から入りました。
その後、この写真の今泉忠義訳と林望訳を読みました。
円地文子、林望氏は作家ですが、今泉忠義氏は國學院大學の国語学者です。
円地、林訳は自分には合いませんでした。
そのほかにも有名なところでは、瀬戸内寂聴、谷崎潤一郎、田辺聖子訳などがありほとんど小説家による訳です。
小説家の訳は良くも悪くも作家独自のフィルターが入ります。
各作家が自分の解釈や感性で現代語訳を作ろうとしているし、それを望まれている部分もあるから当然でしょう。
自分が今泉訳が良いと思ったのはそのフィルターが無かったからです。
正直、文章はこなれてません。
英語の関係代名詞を日本語に直訳したときの「~するところの」みたいなまどろっこしさが時々あって、「あ~、もちょっと文章なんとかならんのか?;;;」と思いながら読んだりしました。(≧▽≦)
でも気づいたのは、他の訳では感じなかった平安の雅を感じたのです。
おそらく今泉さんは最大限正確に一点も損なわずに現代語に置き換えることに腐心されたのだと思います。
なので訳者のフィルターがかかっておらず、雅な世界を堪能することができたのかと。
源氏物語は誰の台詞なのかわかりづらく、また源氏以外の登場人物は全員官職名のため、出世すると変わって誰だかわからなくなるのですが、そのあたりもわかりやすく書かれています。
ということで、現代語訳は個人的には

「新装版 源氏物語(全7巻)」今泉忠義訳(講談社学術文庫)
がおすすめです。

ちなみに川端康成も現代語訳をやろうとした形跡があるそうです。
でもおそらく何を言ってるのかよくわからない源氏物語になっただろうと言われています(≧▽≦)
近年のでは「正訳 源氏物語」を読みたいのですが、全巻そろえると非常にお高い;;;;

源氏物語は長くて読むのは大変。
しかも最初の頃は紫式部も作家としてこなれていないので主役としての光源氏の魅力もいまいち。
ただのイケメンの万能選手でしかない。
それで「須磨」の巻あたりで挫折してしまう人が多く、そういうのを「須磨源氏」と呼ぶそうです。
ところが物語が面白くなり光源氏も人として魅力的に描かれるようになるのはこの須磨以後なのです。
光源氏が亡くなった後の子孫たちの物語が最後の十巻である宇治十帖です。
小説としては完成されて非常にクオリティが高い十巻で、これは紫式部ではなく別の後継者が書いたのだろうという説もあります。
しかし、それならば同じ時代に突如二人の天才が現れて、その他にはいないというきわめておかしな事でもあり、また最初の巻から紫式部は作家として成長しているので、紫式部が一人ですべてを書いたというのが本当だろうと思われます。

さて、何しろ千年前のお話なので、時代背景やその他諸々が読んでいてもよくわからない部分が多い。
そういうのを補うためにいろいろな参考書を読みました。
一番のおすすめは絶版なので古書でしか手に入らないけど
・「光源氏の世界」I・モリス(筑摩書房)
文字も小さく二段組みでぎっしりなので読むのは大変ですが、いろいろなことがわかりやすく書かれています。
こういうのが日本人の手で書かれていないのは残念。
物語中の男はとにかくやたらにたいそうに泣いたり、男女とも簡単にショック死してしまうのだけど、そのあたりも「なるほど」と腑に落ちる(≧▽≦)
その他にも理解のためにも読み物としても面白い本を写真に入れました。
(中央の「源氏物語」は原文の文章を見たくて買っただけ)
右の色辞典は源氏物語を絵に描きたくてその参考に入手した、物語をイメージして色を染めた吉岡幸雄さんの本です。
これは自分が物語の絵を描こうと思って参考書として入手しました。

描くに当たって左上の「よみがえる源氏物語絵巻」を教科書的にしました。
これは国宝源氏物語絵巻の修復に関する図集ですが、平安時代に描かれたこれらの絵の様式に倣って、当時の人が観てもおかしくない絵を描きたいと思いました。
参考にいろいろな時代に描かれた源氏物語に関する絵を見ると、江戸時代に描かれたモノなどは結構間違いが多くみられます。
建物の構造であったり平安貴族の立ち居振る舞いであったり。
そういうのも徹底的に調べてなるべく平安時代としておかしくないようにしたつもりです。

今のところ描けたのは「紅葉賀」と「雲隠」の二枚のみです・・・(どちらも色鉛筆画)
左右の下にある布の色合いは、前述の吉岡幸雄さんの「源氏物語の色辞典」を参考にしています。
お話は全部で54帖あるので、とても全部描くのは無理です(≧▽≦)