思い出の本

これはNHKの今のEテレで放映されていた趣味講座のテキスト。
やなせ・たかしさんが総合司会の「イラスト入門」。
たぶんこの番組が、いま自分がイラストレーターをやっている原点。

これが放映されていたのは、大学を出て最初に就職した年の秋。
絵の方面へ進むなんて全く考えていなくて「絵は趣味でやるもんだ」と思って、よくわからずにSEを仕事とする会社へ入り、2ヶ月の研修後に大阪支店に配属になった。
絵は趣味にするべきと思ったのは一般論では無く、自分は絵を描くのが好きでも、仕事になるほどの力量も才能も無いと自覚していたから。

それで普通に就職してなんだかわからずにSEの会社へ入り、大阪のアパートでこの番組を見ていた。
その中でゲスト講師のイラストレーター・絵本作家の黒井健さんの特殊な色鉛筆技法が紹介されていた。
それにピンときて必要な道具を買ってきて真似しはじめた。
技法的には難しいものでは無く、すぐにそれなりに体得。
それでせっせと描いていたなぁ(≧▽≦)。
基本的にデッサンは上手くなかったし複雑な絵も描けなかったけど、その技法だとかなり上手そうに見える。
それで、いろいろ少ない要素で構図を考えて描いていた。
そこで構図感覚をかなり磨くことになった。

そもそもその後もそうだけど、熱心にいろんな作家の絵を見たりしていなかったので、やなせ・たかしさんをはじめゲスト講師のことも一人も知らなかった(≧▽≦)。
強いて言えば福田繁雄さんのだまし絵的なモノをどこかで見たような、くらいで。
やなせさんはアンパンマンで世に広く知られるようになったけど、自分が子供の頃には無かったし。

なぜこの番組を見たのかはまったく記憶に無くて、たまたまテレビ番組表で目に入ったからじゃないのかなぁ。
結局、イラストを仕事にするようになったのはそれから15年近くも後のこと^^;;
イラストが仕事になった当初は、この黒井さんの色鉛筆油ぼかし技法さまさまで、水彩か他の画材で描いたら普通のイラストであっても、そこそこレベルの高そうな絵に見えた。
途中からメインは透明水彩にしていて、それは仕事で描くにはその色鉛筆の技法は手間がかかりすぎ、描けるモチーフも限定されてしまうから。

そういえばその番組の9年後に、やなせ・たかしさんが編集長をつとめる「月刊・詩とメルヘン」の月例イラストコンペに出品して、いきなり入選候補にしてもらった。
その頃は、すぐには無理でもイラスト方面でやれたら、、、という感じで少しずつ軌道修正をしていて、印刷の勉強をした方が良いだろうと思い印刷製版の会社へ入った後だったか。
ちなみにそのときも印刷製版がどういう仕事なのか、勤務初日まで全くわかっていなかった(≧▽≦)
そのときのやなせさんの評は「これは葉祥明の世界(と同じ)だから、もっと違う絵を描かなければいけない。色調は良いのに・・・」と。
ちなみに葉祥明さんが誰だか知らなかった(≧▽≦)
その雑誌にも葉祥明さんはしょっちゅう描いているのに名前をチェックしてなかったので(≧▽≦)。
「違うのを描けと言われても、これも自分の絵だから!」と意地になって毎月同じ路線で送って、毎回入選候補止まりになっていた^^;。
一度だけ選外秀作をもらったけど、そのうちに送らなくなっちゃったな。
詩とメルヘンのコンペに送っていたのは、いろいろなイラスト雑誌のコンペの中では比較的自分の絵で出しやすかったからで^^;;

ということで、人生を変えた本とういのが良く紹介されるけど、自分にとってはこれかもしれない。
本というより番組だけど。
このテキストは、最初に買ったときのは誰かにあげてしまっていて、後年に神保町の古本屋・悠久堂書店で見つけて買ったもの。