兵士は起つ―自衛隊史上最大の作戦―」(新潮社)を読み終えた。

自分は報道でしか3.11の事を知らないが、いかに凄惨なモノだったのかテレビの映像よりも生々しく知った思いがする。
一人の例外も無く「自分より国民の命だ」と、自分の家族や自分自身よりも国民のために立ち向かった隊員達。

初めて知った意外な事実は、暴走する原発の対処に立ち向かった「中特防」の隊員達。
陸上自衛隊・中央特殊武器防護隊の略で、平たく言うと大量破壊兵器に対応する部隊で「核・生物・化学兵器」などのスペシャリストである。世界でその勇気ある行動をたたえられた、原発二号機上空からの海水投下を中心になって行った部隊である。

それらの非常に危険で困難な中でも冷静に任務を遂行したのだが、それは彼らが放射能の危険性を最も熟知しており、日本で最も「放射能を正しく怖がっていた集団」であったということなのだ。
正しく怖がっていたから、正しい防護もでき、正しく躾も徹底されている。どこではマスクを外しても大丈夫で、どこではしっかり防護衣を着なければ行けないかを知り尽くしている。

あまり中身のことを書くのもあれなのでこの辺にするが、有事の際は何よりもまず任務が絶対最優先される。
今までも様々な災害で自衛隊が活躍したが、この3.11は、今まで災害派遣にかり出されたことが無い部門も総動員したほどの未曾有の大災害で、自衛隊史上例が無い総動員態勢だったのである。
その活躍を賞賛されたり、自衛隊の存在を肯定的に見る風潮が強くなっているが、自衛官自身は「我々は目立つべきでは無い」という。
「目立たない存在でいる(活躍する場が無い)方が、日本が平和なのだという証拠で」と。